武田百合子の「あの頃」を読んだ。
娘の花さん編による単行本未収録のエッセイ集である。
読み終わってしまうのが寂しくて、大事に大事にページを繰る。
今、生きておられたら92歳だというのに、どうしてこんなに感覚が重なるのか。
同年代の女友達といるような気持ちになるのだ。
花さんによれば、これまで単行本未収録の随筆出版の話は何度もあった。
しかし、生前の百合子さんは推敲を重ねるのを常としていた為、出版をためらっていたという。
出版社の担当者は「しばらく誰とも話をしたくなくなるような、いいエッセイでした」と花さんに伝えたという。
うん。その気持ち、よくわかる。
人がそれぞれに持つ寂しさを抱きながら、自身の美学の中で生きていく。
諸行無常の響きありーという言葉が何度も浮かんだ。